漆を使ってうつわの割れた部分を接着したり、欠けてしまったところを埋めて修復する金継ぎ。
そう、漆はウルシノキから採取された天然自然の樹液です。
化学物質を使わないからきっと体に悪いことはないけれど、ただの樹液で接着するとなると少し不安…。
そのように思われたとしても、仕方がないのかもしれません。
でも、実際に金継ぎされたうつわを分解してみようと試みてみれば、そんな不安は一気に吹き飛ぶでしょう。
以前、割れたうつわを接着したものの、ほんの少しだけズレていたことがありました。
目立つほどではなかったのでそのまま先の工程へと進めていたのですが、
「やっぱりここで妥協して仕上げてしまうと後で絶対に後悔する」と思い直し、分解してやり直すことに。
そして、鍋に水を張ってうつわを入れ、グツグツと煮込むこと30〜40分。
「もう大丈夫だろう」と思ってお湯からうつわを取り出し、力を入れて外そうとしたのですが、
これがそうそう簡単には外れません。
瞬間接着剤やパテなどで直されたものだったら、すぐにポロッと取れるのに…。
一定の条件下に置いておけば、漆はおよそ半年ほどでほぼ硬化します。
そこからさらに少しずつ硬化を続け、完全に固まるのはなんと50年後だという説も。
それなのに、接着してからわずか1〜2ヶ月ほどでこの強度!
自分のミスから始まったことですが、おかげで漆の力強さを身を持って知ることができました。
自然界に存在する最強の接着剤だと言われる漆。まさにその通りだと思います。
金継ぎされたうつわは、壊れる前と変わらず使っていただいても、強度的には何の問題もないでしょう。
ただし、摩耗によって金が剥がれてきたり、
電子レンジや食洗機に入れることはできなくなりますので、それだけはご承知おきください。