簡易金継ぎや現代金継ぎと言われる接着剤やカシュー塗料を使った金継ぎを含め、
金継ぎのやり方を解説した実用書は、
金継ぎが注目され、人気が高まるにつれて数多く出版されるようになりました。
でも、そこから一歩踏み出して、
金継ぎそのものや文化的な背景、金継ぎが施された歴史に残る名品、
そして金継ぎには決して欠かすことのできない漆などについて詳しく書かれた本は、
ほとんど見かけることができません。
そんな中、金継ぎ教室の生徒さんから教えてもらったのがこちら。
清川廣樹著、『金継ぎの美と心』です。
なんと、しばらくお会いせぬ間に、うちの師匠が本を出していたではありませんか!
それを本人からではなく、生徒さんから教えてもらうとは…。
著者である清川先生は京都、大徳寺の門前に工房を構えており、
私たちはそこで金継ぎを学んでいました。
そこでは技術的なことに加え、漆そのものや漆文化のこと、日本の職人が置かれた現状、
先生が神社仏閣などの修復を手がけていた頃のエピソードなど、
作業中や飲みに出かけた際に、さまざまなお話を聞かせていただくことができました。
この本は、そこでいつも先生がお話されていたことを一冊にまとめたような内容です。
そして、この本の何より素晴らしいポイントは、
日本語で書かれた文章の横に英語の対訳が記載されているというところ。
正直、私は英語があまり得意ではありません。
たまに日本語の分からない外国人のお客様が来られると、できるのは簡単な会話くらいで、
本当は金継ぎの技法について説明したり、
それに欠かせない漆についてお伝えしたいのに、自分の英語力ではそこまでできないのです。
そんな時、この本があると助かります。
「これはうちの師匠が書いた本で、英訳もあるのでオススメですよ!」と言うと、
とても興味を持たれ、帰りに近くの大型書店などで買ってくださいます。
伝えたいことの大半はこの本に書かれているので、これは非常にありがたいもの。
恥ずかしながら、自分の英語力のなさをカバーしてくれています。
金継ぎについてより深く知りたい方はもちろんのこと、
外国人のお知り合いが多い方にも、金継ぎを中心とした日本文化を伝えるツールとして、
この本はとてもオススメできると思います。